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小さな世界の外側で ~第6話~ [小説:小さな世界の外側で]

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 傷が完全に癒えるのに、2週間ほどかかった。その間に、これが現実か、よほどリアルな夢かを判断することはできなかった。しかし、理解したこともある。ダルとソラノは魔物の退治屋をしており、テイラーとチャーリーは魔物だが、主従関係を結んだ退治屋のパートナーらしい。ソラノは医師でもあり、ジョンが入院した診療所をやっている。ジョンが別の世界から来てしまったらしいと聞いても、彼らは驚かなかった。
「そういうことって、たまにあるらしいわね。別のところから来て、帰っていった人もいるそうよ。」
 ソラノの言葉は、一縷の希望そのものだった。
「どうやって帰れるんですか?」
「さあ、そこまでは分からないわ。」
 ガッカリしないわけではなかったが、帰れる可能性が示唆されたことは喜ぶべきことだ。
「よそ者にとって、ワートは変わったところらしいな。ジョンの世界には魔物がいないのか?」
 ダルは興味津々といった様子だ。
「いません。」
「じゃあ商売もできねぇな。」
 魔物退治屋と聞いて当初は胡散臭い印象を受けたが、この世界ではまっとうな仕事のようだ。魔物は昔からワートに存在し、人間と敵対してきたらしい。そのほとんどは謎に包まれている。テイラーやチャーリー自身にも、自分が何者か、どこから来たのか等は分からないという。
「ワートには魔物がいるからよそ者が来るって噂もあるよな。別の世界から、魔物が人間を連れてきちまうって話。」
 そういうこともあるかもしれないと思った。何しろ、パラレルワールド自体が常識を超えている。もう、何があってもおかしくない。もしそうなら、アース国に帰る鍵も魔物にあるのかもしれない。
「ダルさん。」
「うん?何だ、かしこまって。」
「僕も退治屋になれますか。」
 一瞬の静寂。次の瞬間、ダルは笑いだした。
「なろうと思ってなれるもんじゃないぞ。何しろ命懸けだ。魔物ってのは、人間よりずっと強い。それとやり合うんだからな。」
 ダルは、ジョンが冗談を言ったと思ったのだろう。しかし、ジョンの真剣な顔を見て、笑いを消した。
「おいおい、本気か?」
「はい。」
 ダルはうーんと唸った。
「じゃあ、まずは仕事を見てみろ。それで、どんなもんか分かるだろ。ただし、そこから命懸けだ。何も保証できんぞ。」
 不安と緊張はとんでもないが、それでもジョンは頷いた。
「と言っても、いきなりそんな危ない目に遭う必要もないだろ。体が平気なら、まずはその辺の散策でもしてきたらどうだ。いろいろわけ分からんと思うが、せっかくよそから来たんだ。楽しむことも考えてみろ。」
「・・・それもそうですね。」
 そこまで脳天気に考えることはできそうにないが、思いつめていても仕方がないのは事実だった。
「ソラノに案内してもらえ、な。診療所は閉めちまえ。」
 強引な口調のダルに対し、ソラノはやれやれと言った様子だ。しかし、診療を求める患者はこの2週間ほとんど見ていない。来たとしても、風邪気味の老人や自転車で転んだ子どもくらいだった。
「こんな小さな街、案内するところなんて無いわよ。」
「いいじゃないか。散歩と思って付き合ってやれ。俺は働いてくるから。」
 そう言ってダルは、テイラーを連れてさっさと出て行った。ジョンとソラノも、それに続く。
「チャーリー、お留守番よろしくね。」
「デートかよ。面白くねぇな。」
 ふてくされた様子のチャーリーを残し、ソラノは診療所の鍵を閉める。チャーリーがジョンに対してべーっと舌を出して見せるのが、ドアの隙間からちらりと見えた。

小さな世界の外側で ~第5話~

小さな世界の外側で ~第7話~






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タグ:小説
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