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小さな世界の外側で ~第32話~ [小説:小さな世界の外側で]






 冬も近いというのに、山の中は鬱蒼としていた。しかし、気温が急に下がったかのように寒い。
「おかしいな。なんの気配もしない。」
 歩きながら、ハナが辺りを見回す。彼女の言う通り、山の中は妙な静けさに包まれている。ジョンが以前入ったときは、雨が降っていたのと必死だったせいで、あまり周りは見ていなかった。改めて見てみると、山の中は美しい。木々が茂り、生命力に満ちている。しかし、不気味でうすら寒い雰囲気が漂っているのも事実だった。
「本当に1匹もいないな。ハジの奴、ずいぶん舐めてるみたいだ。」
「敵がいないのはいいことじゃないか。」
「バカ言うなよ。トワイエに来られても問題ないって思ってるから、何もいないんだ。トワイエには相当ヤバいものが待ってるんだろうよ。」
 その会話を最後に、全員が黙った。急斜面の山道を、ひらすら登る。ジョンは息が上がってきたが、歩みは止まらない。とうとう何も起こらないまま、山頂、つまりトワイエの入り口に到着してしまった。
「着いちゃったね。」
 そこは異様な空間だった。狭い山頂を覆うように、黒い靄が立ち込めている。あの世の入り口という表現がしっくりくるような場所だ。
「この先は本気でヤバいけど、どうする?」
 ハナが笑いながら言う。
「ここまで来て、引き返すなんて選択肢があるか。」
 ダルの言葉はもっともだった。
「あはは、言ってみただけだよ。」
 ハナが靄に入っていく。すべてを飲み込んでしまいそうな漆黒に、ダルもテイラーも入っていった。ジョンは深呼吸をひとつし、意を決して飛び込んだ。






小さな世界の外側で ~第33話~


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タグ:小説
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詩人の血

相変わらずのご健筆、お喜び申し上げます。
今を去ること何十年前、オカルト修行を始めた頃、
中沢新一と言う宗教学者が、チベット僧との共著で
「虹の階梯 チベット密教の瞑想修行」と言う本を
出してその当時大変役に立ったことを思い出しました!
Amazonで中古を安く買えると思います。
by 詩人の血 (2015-05-22 21:48) 

井上さき

詩人の血 様

コメントありがとうございます。
もう何十年もオカルティズムを続けてらっしゃるのですね。
私はまだまだ新参者ですが、読んでいただけて光栄です。
by 井上さき (2015-05-23 08:58) 

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